アフリカ経済・政治研究所

アフリカの今と未来を伝える。世界最大の人口大陸となるアフリカに焦点を当てて、日本から分かりやすく発信。政治的中立性を保ち、投稿しています。

アフリカ大陸における6つの優先課題発表される(ブルッキングス研究所)

ブルッキングス研究所より、アフリカ大陸における6の優先課題が発表されている。

その内容には様々な議論があるものの、ブルッキングス研究所という一流とされる研究所において特に欧米諸国がどのような問題意識をアフリカ大陸に対して抱いているのかが分かり非常に興味深い。

 

www.brookings.edu

1.Bolstering good governance(グッド・ガバナンスの強化)
The imperative of inclusion and efficiency

2.Managing debt and mobilizing resources(債務管理と資源動員管理)
A delicate balance to sustain economic growth

3.Harnessing Africa’s youth dividend(アフリカの若者(人口増加)の配当を支える)
A new approach for large-scale jobs creation

4.Fixing fragility(脆弱性の克服)
The role of the private sector and local institutions

5.Africa’s untapped business potential(アフリカの未開発のビジネスを進めていく)
Countries, sectors, and strategies

6.Boosting trade and investment(貿易と投資の促進)
A new agenda for regional and international engagement

特段目新しいものはないものの、どの項目も非常に興味深い。何よりも、グッド・ガバナンスが第一位に挙げられていることが欧米のシンクタンクならではの見解であり非常に興味深い。コンゴ民主共和国中央アフリカ、ナイジェリア、スーダン等で政治に関して様々な動きが生じているが、こういった上記のレンズで、報道を分析してみるのも非常に重要であることを改めて確認できた。

益々、アフリカから目が離せない。

 

スーダン大統領が非常事態宣言(アフリカ開発とガバナンス)

昨日、スーダンにおいて、バシール大統領により非常事態宣言(戒厳令)が出された。

 

日本語での報道もチラホラ出てきているが、必ずしも十分には報道されているとは言い難い。具体的に何が起こっているのか、ここでまとめてみたい。

www.asahi.com

 

スーダンでは昨年末より、パンへの補助金カットを起因とする反政府デモが活発化していた。今回の非常事態宣言(及びその後のバシール大統領の発表)は以下の内容を含んでいる。

・非常事態宣言は一年間

・新しい副大統領と首相の任命

・全ての州知事を軍政府出身者とする。

 

www.theguardian.com

スーダンでは、昨年末から30年近くに及ぶバシール大統領政権下で、不満の声が募っていたとされている。反政府側によると、デモに対しては催涙ガスが使用され、60名近くが死亡しているとの声もある。

一方、今回の非常事態宣言により何が起こるのか。スーダン憲法に基づき、国家安全保障や経済開発に脅威と見なされれば、警察、治安部隊、軍により令状なしの捜索、逮捕が可能となるとのことである。治安部隊の能力と国民へのコントロールが高いとされるスーダンにおいては、反政府側の活動が今度困難になるのではないかという報道もなされている。

www.aljazeera.com

 

いずれにせよ、スーダンから益々目が離せない。

 

 

 

 

 

どっちに転んでも.. なのか。ナイジェリアの大統領選挙近づく

昨年来から海外メディアで報道されていたナイジェリアの大統領選挙報道であるが、ようやく日本のメディアでも取り上げられるようになってきた。

 

www.nikkei.com

16日に再選を目指す現職ブハリ大統領と対抗馬のアブバカル元副大統領(通称:アティク氏)による事実上一騎打ちが予定されている。本選挙は以下の点において非常に興味深い。

まずどちらも、北部(イスラム圏)出身者であることである。伝統的に国土が広く民族、宗教も多様なナイジェリアでは北部と南部で順番に大統領が選ばれてきた。しかし、今回の選挙はどちらも北部出身者が有力候補となっており、前回とは明らかに様相を異にしている。

次に、ナイジェリアの将来が見えにくい選挙である。決して批判ではないが、現職ブハリ大統領、野党のアティク候補共に、原油価格の低迷の中で2%台の急激な人口増加にあえいでいるナイジェリアの未来の絵姿を描き切れていないとされている。

最後に、今回の大統領選挙が果たして一回で決着がつくかという点である。現地メディアによると現在2者の支持率は拮抗している。ユーラシアグループの世界の10大リスクでも言及されていたが、もしも選挙結果について一方が異議を唱えることがあれば、混乱は必至である。

 

今後もナイジェリアの選挙動向から目が離せない。

 

 

 

アフリカと中国 -Africa and China-

アフリカと中国は切っては切れない関係である。

 

アフリカ各国の地方に行くと、大体チャイナ、シノワ(フランス語圏)と声をかけられるし、首都の空港、主要幹線道路、鉄道等何等かの主要インフラに中国の支援が入っていることが多い。さらには、最近では主要な金融機関(地域金融機関)に中国資本が入っていることも多くある。

国内においては、こういった中国の存在は常に日本との対比で語られることが多い。但し、実際には資本、人的資源等の日中差はあまりに大きく、対比の形で語ること自体、違和感を感じるケースも出てきている。

www.aljazeera.com

西洋諸国の論調の一部には、「再植民地化(Recolonization)」と揶揄する動きもあるが、当のアフリカ各国にしてみれば、当該国の成長・発展に資するような活動が推進されれば、中国であろうと欧米諸国であろうとそこまで関係ない。

 

一方で、日本国内世論は常に中国を意識した論調が多い。このような現実に即した中、今年8月に横浜で行われるTICAD7においてどのような打ち出しがなされるのか、非常に興味深い。

 

 

 

African Economic Outlook(AEO) 2019発表される!

アフリカの経済を把握するのであればいくつか外せない定期刊行物がある。そのうちのひとつがアフリカ開発銀行(African Development Bank)が発刊するAfrican Economic Outlook(AEO)である。AEOは、世界銀行が発刊するAfrican Pulse, IMFが発刊するRegional Economic Outlookと並び、アフリカ開発に関心を有する研究者、実務家にとっては切っては切り離せない刊行物である。

そのAEO2019が、1月17日に発表されたところ、概要を簡単にレビューしたい。

www.afdb.org

 

1.比較的明るい見通し

AEOは、アフリカ各国の出資によって成り立っているアフリカ開発銀行の定期刊行物であることもあり、比較的前向きな予測を立てることが多い。今回も、2019年の成長率は4%と予測している。2016年が2.1%、2018年が3.5%(予測)であったことを考えると野心的な数字である。

 

2.アフリカの今後の発展に欠かせない章立て

AEOの今年の章立ては以下の通りとなっている。

第一章:マクロ経済の見通し

セネガルルワンダと言った非資源国が7%近い成長率を記録し、(ナイジェリア、アンゴラと言った)資源国の低成長率を吸収する。

第二章:雇用、成長等

アフリカの労働力人口は2030年までに40%増加する。

第三章:アフリカの経済成長及び統合

陸自由貿易協定(Continental Free Trade Agreement)は貿易の円滑化にとって非常に重要である。関税及び非関税障壁を取り除くことで、貿易促進が見込まれ、アフリカは各国間の連結性を強めるべきである。毎年13兆~17兆円(1ドル=100円換算)/年のインフラ投資が必要とされる中、実際の投資はその半分にも及んでいない。

 

今後ともアフリカから目が離せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上

 

 

 

 

 

 

汚職対策は命がけ- Fighting Corruption is sometimes dangerous-

今、カルロス・ゴーン氏やJOC竹田会長の汚職疑惑がメディアを賑わしている。いずれも捜査中であるものの、特定の行為を巡って不透明な金銭のやり取りがあったのではないかというのが、捜査のポイントである。不透明な金銭授受は、いわゆる汚職や法律違反といったという話にも繋がる。

 

残念ながら、アフリカにとって汚職という言葉は切っても切れない関係にある。如何に、汚職がはびこっていると認識されているか。CPI(Corruption Perception Index)において、真っ赤に染まる大陸を見れば一目瞭然である。

www.transparency.org

 

最近は若干程度が減ってきたものの、たとえばコートジボワール、ナイジェリア、コンゴ民主共和国と言った国に行くと、空港で税関検査を受けることも多い。税関では、”something to eat?" "I'm hungry"と言った言葉で、暗に賄賂に近いものを要求されることもある。"Where is my lunch?"と言ったジョークに近いものもある。ここでひるんではいけないものの、国の玄関というべき空港でこのような発言が行なわれる国の内情は推して知るべしかもしれない。

 

汚職は、外国人にとってのみならずその国の人々にとっても非常に危険なものであるようだ。ナイジェリアの元財務大臣であったオコンジョ氏は在職中に非常に革新的な財政改革を断行しようとしたため、自らの母親を誘拐され脅迫された過去を持つ。その生々しい状況は以下の著書に詳しい。このような状況では、通常のハートの持ち主では改革は進められないだろう。

Fighting Corruption Is Dangerous: The Story behind the Headlines (The MIT Press) Hardcover – April 20, 2018

 

汚職が、アフリカの経済成長の足かせになっていることは間違いない。汚職撲滅が自助努力で進む場合には、相当の条件が揃ったときのみである。

 

 

 

アフリカの持続的成長のトップランナー(?)-ルワンダ

先週、ルワンダのカガメ大統領が来日していた。国会議事堂前には数日間日本国旗とルワンダ国旗とが掲揚され、見慣れない水色・黄色・緑色の旗に関心を持った方も多いのではないか。

ルワンダは1000万人足らずの小国ながら、アフリカで非常に戦略的に立ち回りプレゼンスを保っている国である。自らを小国と認識しつつも、IT産業を中心に、アフリカのスタートアップ・エコシステムを築こうとするその姿勢は非常に学ぶ点が多い。

r.nikkei.com

 

安倍首相から、「アフリカの持続的成長のトップランナー」と形容されたルワンダ、益々今後目が離せない。